【はかり商店】計量器の校正について

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「校正」について

そもそも「検査」「点検」「校正」ってどんな違いがあるのかよくわかりにくいですね。
ここでは一般的には最も馴染みの薄い「校正」について説明致します。

※「定期(法定)検査」および「検定」に関してはこちらで説明しております

※計量器の日常的な「点検」に関してはこちらで説明しております

はかり商店では計量機器及び分銅・おもりの校正のお問い合わせも承っております。下記リンクからお問い合わせをお願いいたします

※豆知識 その1 Calibrationと較正

「校正」は英語にするとCalibration(キャリブレーション)

漢字では本当は『較正』と書くのですが常用漢字の音訓表にない読みのため

「校正」あるいは「こう正」と表記することが一般的です

1,校正とは

そもそも校正ってなんでしょう

「不確かさ」の確認

・計測・計量機器ひとつひとつの精度(器差ズレ≒不確かさ)を「確認」することです。
別の言い方をすると「計測・計量機器の精度の現状を把握確認すること」といってもいいと思います。

・具体的には何をするのかというと、高精度の標準器(例えば分銅)と実際の測定結果を比較することで対象となる機器の「不確かさ」を測定します。

その測定結果を後述する「校正証明書」「検査成績書」などの書面を作成して成果物とする作業となります

「校正」は直しません

・校正には「修理」「メンテナンス」の概念は含まれていないので、ズレを直したり、機能を改善したりするものではありません

器差ズレを直す作業に関しては「修理」として別途お受けいたしますのでご相談ください

「校正」は法定義務ではありません

・「検査」と異なり法律上義務化されているものではありません。

※「検査」に関しましては別途コラム”【はかり商店】計量器の定期検査について“にてご説明しております 

・取引及び証明用途に使用される検定付き計量・計測機器については2年毎の検査が義務化されています。(計量法19条)

【参考資料】

 ●JIS(Z8103:2000)計測用語定義では:校正とは

「計器又は測定系の示す値,若しくは実量器又は標準物質の表す値と,標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業。備考 : 校正には,計器を調整して誤差を修正することは含まない。」

●計量法における校正の定義(計量法2条7項):

「その計量器の表示する物象の状態の量と標準となる特定の物象の状態の量との差を測定することをいう」

2,校正を行う理由

ではなぜ校正が必要なのでしょうか?

計測、計量作業の正確さの確保・保全とその立証

・計測・計量機器は経年劣化等の理由で誤差を生じる場合があります。その誤差が測定精度に影響しないことを確認するために定期的な校正が必要となります。

・ISO9001的な観点からすると「監視機器及び計量・測定機器の管理」(定められた間隔又は使用前に、国際又は国家計量標準にトレース可能な計量標準に照らして校正又は検証する)に符合します。すなわち、校正の必要性は、ISOの要求を満たす目的だけではなく、計量機器を通して製作された自社製品の品質・仕様の確保・保全のためにも必要になるものです。

・校正を定期的に行うことでその期間中の計量機器の状態を確認・立証することができます
すなわち、校正済の計量機器で計測されたことをもってその計測結果の品質が確保・保全されたことを間接的に証明しているのです

お取引先様から校正関連の書面の提示を求められる理由はその上述の証明を求められているものと理解できます

3,校正の周期について

お客様からたびたびご質問を頂く校正の周期について説明します

一般的には1年に1回

・上述したように、「校正」は法定義務化されているものではありませんし、ISOにおいても校正周期(期間や有効期限)は決められていません。つまりお客様ご自身で決めていただくことになります。だからといって長い期間校正されていない計量機器で測定すると測定値の信頼性が低下します。
一般的には1年に1回の校正が推奨されています

日常点検、定期点検とセットで

・同じ計量機器であってもお客様によって使用環境や使用頻度が異なるため、お客様の使用環境に適した校正周期を見定めるためには、1年毎の校正を数年繰り返すなど校正実績を積んでいくことが必要になると思われます。

・その際、適正な標準器(分銅など)をご用意いただき、日常点検や数ヶ月毎の定期点検を行うことによって更に精緻でかつ安全な校正周期を策定していただくことができるでしょう

4,機器の管理について

計量・計測機器の管理の必要性についてご説明します

計量機器の管理の徹底は必須

・計測、計量機器の何が何処でいくつ使用されているかについて漏れがないように管理されている必要があります。
これは社内で校正を行う場合だけでなく社外業者に依頼する場合であっても必須となります。
まず「機器のリスト化」からすすめていきましょう。

・一般的には、品名、型式、シリアルナンバー(器物番号)、管理ナンバーなどを記しますが、それ以外にはカテゴリーとして「工場名」「部署名」「ライン名」などを付加しておくと便利です。また上述した「校正周期」を記しておくと校正漏れをふせぐことができると思われます

「管理ナンバー」の付番

・リスト化するにあたり、機器ひとつひとつに対して任意に管理ナンバーを付番しておくと便利です。
そのメリットとしては
・メーカー独自の製造番号がない機器についても統一的に管理できます
・自社校正を行う場合も外部校正を行う場合も漏れのない正確な校正が可能です
・機器の移動を行っても管理ナンバーをキーにして管理が可能です

※機器管理リストサンプル※

5,校正に関する書類について

校正作業の成果物としての書面類について説明します

校正証明書類について

・一般的には校正証明書、検査成績書、トレーサビリティ体系図などが「校正証明書類」となります。
(場合によっては、校正に使用した上位標準器(分銅など)の校正証明書類を含む場合があります)

※ 画像は弊社協力メーカー様である村上衡器製作所様の校正証明書のサンプルです

※豆知識 その2 トレーサビリティ

トレーサビリティについて

高精度な標準器から校正を受けた標準器を用いて測定を受けた機器(分銅など)を別の標準器として校正に使用することができます。その計測・計量機器の信頼性が国家標準あるいは国際標準まで遡れることを保証する仕組みです。

※ 画像は弊社協力メーカー様である村上衡器製作所様のトレーサビリティ体系図のサンプルです

弊社はかり商店ではお客様から校正のご用命をいただきますと、メーカー様あるいはサービス提供会社様のフォーマットで上記書面をご用意いたします。お客様独自のフォーマットでの校正証明書類の作成をご所望の場合であってもできる限りご要望にお答えいたしますのでお問い合わせください

6,内部で校正を行う場合

弊社はかり商店では上記の通り校正作業を請け負っております。 

ここではお客様が独自に計量器(質量計)の校正作業を行われる場合について説明します

標準器(分銅)の準備

◎校正対象の計量機器の精度を超える標準器(分銅)を準備します。

例えばですが1目盛り5mmの定規では1目盛り1mmの定規の精度は測れませんね

以下に標準器となる分銅の選定方法について説明します

1,はかりの精度等級を確認します

・はかりの目量の数を計算し下記のはかりの精度等級表により、精度等級と最小測定量を決定します

「目量の数」は【ひょう量/目量】で算出されます
「最小測定量」は下記表を参照して確認します(e=目量)
例えば、
ひょう量6000g/目量1gの場合

・・・6000/1=6000 精度等級は3級,最小測定量は20gとなります

ひょう量220g/目量0.01gの場合

・・・220/0.01=22000 精度等級は2級,最小測定量は200mgとなります

2,はかりの最大許容誤差を確認します

はかりの最大許容誤差とは、法規上で許容される誤差のことです

ここでは「検定付きはかり」の使用公差を例に取ります

例えば

精度等級3級のはかり(目量1g)の最大許容誤差は、
500g以下のとき ±1.0g
500gより上~2000g以下のとき ±2.0g
2000gより上~10000g以下のとき ±3.0g

精度等級2級のはかり(目量0.01g=10mg)の最大許容誤差は、
50g以下のとき ±0.01g
50gより上~200g以下のとき ±0.02g
200gより上のとき ±0.03g

3,校正用分銅の精度等級を確認します

・分銅の等級は下記最大許容誤差表から決定されます
・分銅の最大許容誤差とは、分銅のもつ質量の誤差のことです。
・最大許容誤差表を参照しながら計算し、分銅のもつ誤差を許容範囲内におさめる必要があります。

分銅の最大許容誤差は【ひょう量加重に対するはかりの最大許容誤差の±1/3以下】ある必要があります。

※分銅の最大許容誤差の合計が、目量の下の桁で四捨五入しても目量に現れ出ないようにするためです

4,分銅の組み合わせを確認します

・はかりの最大許容誤差を超えないように分銅の組み合わせを決めます
・組み合わせは校正時の計測ポイントと合わせて決定します

計測ポイントは以下を含む少なくとも5つの試験荷重を策定します

・最小測定量
・最大許容誤差が切り替わる値
・ひょう量の1/3以上の単体分銅
・ひょう量

例えば、

・精度等級3級ひょう量6000g/目量1gの場合(最大許容誤差±500mg)

計測ポイント

20g(最小測定量)・・・M2級(合計誤差±8mg)
500g(最大誤差切替)・・・M2級(合計誤差誤差±75mg)
2000g(ひょう量の1/3)・・・M1級(合計誤差±100mg)
3000g(ひょう量の1/2)・・・M1級とM2級(合計誤差±250mg)
6000g(ひょう量)・・・M1級とM2級(合計誤差±300mg)

分銅組み合わせ例
20gM2級×1個,500gM2級×2個,1kgM1級×1個,2kgM1級×2個)

はかり商店では様々な分銅をご用意しております

5,分銅の形状、材質を決定します

分銅には様々な形状、材質があります

◎分銅の形状について
円筒分銅


一般的に広く知られている分銅です。

はかり商店では、基準分銅型、OIML型、等級はE2級~M2級まで重さも1g~20kgまでの取り扱いがあります。
JISマーク入り、ケース入り、JCSS校正付き、基準器検査証明書付きもご用意しております
組み合わせセットも多数ご用意しております

円盤分銅

ズレ防止の段・溝付きで安定感があり、複数個積み重ねることができます。
※はかり商店では、1g~20kgまでの取り扱いがあります。

大型分銅

大ひょう量のはかりの校正に適しています。様々な形状がございます
※はかり商店では、50kg~1000kgまでの取り扱いがあります。

増おもり型分銅

吊り下げ式はかりの質量測定の校正に使います。
持ち運びしやすく、積み重ねも簡単に行えます。
※はかり商店では、10g~20kgまでの取り扱いがあります。

枕型分銅

ひょう量が大きなはかりの校正に適しています。
把手がついて持ち運びしやすく、積み重ねも簡単に行えます。
※はかり商店では、500g~1000kgまでの取り扱いがあります。

板状分銅

小質量の分銅で、はかりの感度確認や、目量の小さい精密なはかりの点検に使用されます。
※はかり商店では、1mg~500mgまでの取り扱いがあります。

◎分銅の材質について

材質を決定するポイントは耐久性とコストです。
耐久性を選ぶならステンレス製が良いですが、コストを考えるとそれ以外という選択肢もあります。

・ステンレス製
質量の変化が少なく、耐久性が高い。

・黄銅クロムメッキ製
メッキで表面処理がされているため、腐食する可能性がある。ステンレス製よりコストが低い。

・鋳鉄製
塗装がされているので剥げることがあるが、ステンレス製よりコストが低い。
「基準器検査成績書」を発行し基準器とされる場合は有効期限がステンレス製の5年に対して1年と短い点に注意してください

組み合わせ分銅

はかり商店ではお得な組み合わせ分銅も様々ご用意しております

7,校正環境の準備

測定室(恒温室)を設ける必要があります

・構成を行う機器の環境に関する変動係数に応じて環境を整備しなくてはなりません

・一般的に計測・計量機器の測定室の環境条件は室温20度です

※豆知識 その3 校正室

弊社はかり商店のグループ会社である株式会社イシダテクノは「計量器の登録修理事業者」でもあるため、社内に校正室を設置しております。

校正室
 

JCSS校正を受けた標準分銅を準備し、作業用にそれらからトレースして実用標準分銅を作成しております。

7,人員の準備

まずは校正員の教育手順と教育の実施が必要です

◎校正員の教育制度とマニュアル

・部署異動などにより、校正経験のない担当者が変更になっても、短期間で要点を覚えて貰う必要があります。
そのためには、校正手順を含めたマニュアルはもちろん、前述した「機器管理リスト」の整備も必要です。

・校正自体は生産性のある業務ではありませんが、「より良い製品やサービスを提供する」ことに繋がる非常に重要な工程であるというその目的と本質を理解しなくてはなりません。

・しかしながら生産的でない業務・工程の削減は常に求められることでもあります。そういった際には外部の専門業者に委託していただくことによって本来の業務に専念していただくことができると思います

8,外部で校正を行う場合

◎まずお問い合わせください!

・弊社はかり商店では現在販売しているメーカー様・商品はもちろん弊社でお買い上げでない商品であってもできる限りご要望にお答えいたしますので、まずお問い合わせください。

◎不適合評価の場合

・前述したとおり「校正」には修理・メンテナンスの概念を含みません。
校正作業の結果、不適合があった場合はお客様への連絡をいたします。
その上でお客様にご判断を頂くことになります

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